第1章 社会を作る私たち

02_青年期と自己形成の課題

要点解説 資料集

青年期と自己形成の課題

私たちの欲求にはどのような種類があるのだろうか?

さまざまな欲求

 人間は生きるためのを有している

  生まれながらのものもあれば、誕生後に獲得されるものもある

   :食欲や性欲、睡眠欲など生命を維持するための欲求

   :社会のなかに生きる人間に生じる欲求

 

  欲求を階層的に捉える

   低次の欲求から順に満たされていくとする

    ①

    

    

    

      

    ①~④はであり、⑤は


欲求不満に対して、私たちはどのように向き合うべきなのだろうか?

欲求不満と適応

 

  さまざまな欲求間の対立が生じ、その選択が困難となる

   欲求の充足を求める個人は社会のあり方や経済のしくみなどにしようとする

  の葛藤の捉え方

   ①:接近したい欲求が2つ以上あって、選ぶことができない

    e.g.放課後は部活に出たいが、誘われたデートにも行きたい

   ②:回避したい欲求が2つ以上あって、選ぶことができない

    e.g.勉強したくないが、それでも親に怒られたくない

   ③:接近したいものと回避したいものが同時に存在している

    e.g.部活は続けたいが、学校の成績が下がるのは嫌だ

 葛藤にどう向き合うべきなのか

  自分の思いを伝えるために周囲へ積極的な働きかけをする

  周囲の意見にも耳を傾け、現実的な調整をはかる姿勢が求められる

 :欲求の充足が妨げられると心の緊張が高まる

  欲求不満が累積すると、その解消をはかるために攻撃行動、退行、目標なき行動などが誘発される

  が高められていれば、それらの行動は現れにくくなる

 

  同一の対象に正反対の感情を同時に持つ

防衛機制

 

  に自己を守るしくみ

  精神分析学者の精神分析理論のなかで示された考え

   防衛機制以外に欲求不満を解消する手段

    :要求水準の切り下げや回り道などによって解決する

    :衝動的な攻撃や破壊で緊張を解消する

    :欲求不満を解消できない

   ※無意識:意識的努力では気づくことのできない心の領域

    によって説明される

  防衛機制の種類

   :欲求不満や不安を無意識に抑え込んで忘却する

    e.g.価格が高くて買えなかった本のことを忘れてしまう

   :もっともらしい理由や理屈をつけて正当化する

    e.g.高いところにあるブドウに対して、「どうせあれはすっぱいから」と思う

   :他者の長所を自分のものとみなして満足する

    e.g.尊敬する人と自己を重ねる

   :自分の短所を他人のものとみなして非難する

    e.g. 職場で上司に怒られた人が「上司はいつも俺を嫌っている」と感じる

   :抑圧した欲求と反対の行動をとる

    e.g.自分の好きな人に対して冷たくしてしまう

   :空想の世界などに逃げ込んで不安を解消する

    e.g.試験が近いのにゲームばかりしてしまう

   :幼児期など発達の前段階に逆戻りする

    e.g.大人が強いストレスを感じて、泣いたり駄々をこねる

   

    :他の欲求に置き換えて満足する

     e.g.子どもがいないから、猫をかわいがって満足する

    :より高い価値の欲求に置き換えて満足する

     e.g.失恋をしたから、猛勉強をして難関校に合格

  防衛機制は自らを守るしくみであるが、真の解決を得るのは難しい

   →葛藤や欲求不満を意識的に受け止め、合理的に解決する努力を払う必要がある

 無意識に関する説明

  無意識の領域にあるにはという本能的エネルギーが蓄えられている

  そうした欲望がに表出する

   ⇔しつけや教育によって形成されたがそれらを検閲する

  によれば、自我の下ののさらに下に全人類共通のがある

   :世界の神話や象徴の類似性から見出せる

パーソナリティの形成

 人間は一人ひとり異なるを有している

  からなる

 パーソナリティが形成される要因

  :「人間は生まれながらにして異なるパーソナリティをもつか?」

  :「人間は生まれた後の経験と学習によって異なるパーソナリティをもつか?」

   →現在では遺伝と環境がと考えられている(

 パーソナリティの分類(類型論や特性論)

  

   体型でパーソナリティを分類

    細長型:分裂気質(非社交的、静かで控えめ、真面目、変人)

    肥満型:躁鬱気質(社交的、善良、親切、温厚)

    闘士型:粘着気質(誠実、几帳面、我慢強い、頑固、爆発性あり)

   ※体型によって性格を分ける分類法には多くの疑問が呈されている

  

   心的エネルギーの向かう方向と思考・感情・感覚・直観の4つで分類

    内向型:主たる関心が自分の内に向かい、自分の内なる判断基準に基づいて判断、行動する

    外向型:主たる関心が自分の外にあり、その判断基準に基づいて判断、行動する

  

   人生に何を求めるかで分類

    理論型、経済型、審美型、社会型、権力型、宗教型に分けられる

  5因子モデル(

   外向性、調和性、誠実性、安定性、開放性の5つの因子からパーソナリティを説明する

 青年期に入ると、自己への関心が高くなる

  パーソナリティの第三の形成要因:

   他者との比較を通して、優れた先輩や友人にあこがれる

   逆に自分を嫌悪したり、劣等感にさいなまれる経験をする

    →自分をかえたいと望み、主体的な努力が始まる



 友達とは何か

  友人関係の特質

   対等性:水平的なヨコの関係 

    →素直に接することができる

   自発性:関係は主体的につくられている

   相互的互恵性:お互いが自己を保ちながら影響しあう関係

   13~29歳を対象とした調査~「自分が友人が十分にいる」64%



  を重要視

  

   は人間同士の適切な心理的距離感についてヤマアラシを例に説明した

   cf.SNSの既読スルー

    適切な心理的距離感をとれていない事例が散見される

    SNSによって連絡が気軽にとれるようになる

     →SNSによって距離感が変わっている可能性も



  人によって変わる心理的距離感の取り方

   e.g.バスが満席の状態で、高齢者の方が乗車した

     自分は座席を譲るべきか?

   

    e.g.「高齢者の方は困っているだろうから、すぐに席を譲ろう」

    感情的に密着したやさしさ

     ⇔共依存的で、境界が曖昧になりやすい

   

    e.g.「高齢者の方が困っている様子がないから、席を譲るのを待とう」

    適度な距離を保つやさしさ

     ⇔境界がしっかりしている分、冷たくみえることも

   時と場合に応じて、2つのやさしさを使い分ける必要もある

 


 恋愛とは何か

  恋愛はときに喜びと苦しみの双方をともない、人間を成長させる

  :精神的に結びつく愛をと呼ぶ

       真善美への憧れをと呼ぶ

  キリスト教:神の本質は「」とする

  儒教:は身近な人間への愛である

  仏教:愛は執着心を意味し、苦しみの原因となる

  現代日本の恋愛

   非正規社員の増加や正社員の過剰労働、恋愛を面倒だと考える人が増えた

    →「若者の恋愛離れ」が現れる



アイデンティティ(自我同一性)の確立

 青年期の

 「

  アメリカの心理学者が提唱

 アイデンティティとは:「自分らしさ」=「自分は何者か」という問いの回答の1つ

  ……

  ……「本当の自分がわからない」「自分は何をすればいいかわからない」

 自分が直面する危機に真正面から取り組み、ときに助言を受け入れながら克服する努力が必要

 心理・社会的発達段階と発達課題

発達段階達成されるべき発達課題失敗の状態人格的活力
乳児期基本的信頼不信希望
幼児期自律恥と疑惑意志
児童期自発性罪悪感目的
学童期勤勉劣等感有能感
青年期忠誠
初期成人期親密孤立
成人期世代性停滞世話
老年期自我の統合絶望英知


 アイデンティティの3つの側面

  

   


  



  



 

  「両親や他のおとなから情緒的に自立すること」「職業選択のための準備をすること」

  「社会的責任のある行動を求め、かつなしとげること」を青年期の発達課題に挙げている

  青年期の発達課題

 


 

  成熟した社会人としての人間像

   感情をコントロールするためのの安定

   自己をすること

   統一した人生観や他者との温かい人間関係

   の自覚

 違いを違いとして認めたうえで、個人を尊重し合おうとするパーソナリティの形成が求められている

  cf.~イスラーム教において許されている食材 

   →は国際化の時代に実現させるべき課題の一つ



現代社会と青年

 家庭は基礎的な人間関係を築く場

  多くの居場所をもてる青年ほど、情緒的に安定して自尊感情をもって他人と接することができる

 承認され、自分の居場所や存在意義を実感できることは重要

  自分に対する肯定感(自尊感情)をもつことができる

   →直面するさまざまな問題に対して前向きに取り組むことができる

 対人関係のなかで大切な点

  対話を通して自らの考えや経験を率直に語り、相手からの応答を自らにフィードバックさせる

  相手の立場に立って共感し、他者理解が進むことで自分の個性や考え方についての理解を深める

   自分とは異なる考え方や価値観に気づかされることもある

 対話を通じて相互承認を深めていくことで、社会における自己のあり方を確立していくことが重要

 心理学

  人間とは自ら主体的な目的に向かって生きる存在である

  目的の追求があるためにが生じる

   ⇔この悩みは人間ならば誰しもがもつものである

    過度になると劣等コンプレックスとなる

  他者を信頼し、他者に貢献し、自己を受容できる人

   =他者と共感し、をもてる人

    自分自身を勇気づけ、劣等感を克服して前に進むことができる()と説く

 はじめての心理学実験(「ミュラー・リヤー錯視」)

  私たちは図形の客観的な性格を主観的に処理する(

   その際に錯覚を起こすことがある

  ミュラー・リヤーの錯視図形では外向図形の主線が一般的に長く感じられる

   心の誤差を錯視量として測定することができる

 社会化~自己中心性を脱する

  

   乳児期:自己中心性

   児童期:

       自分の視点を離れ、抽象的思考が可能に

   青年期:他者の考えや気持ちを理解

       他者が自分の思考や感情をどう思っているかを予測

  ~道徳性発達理論

   前慣習的水準:①罰と服従への志向

          ②道具主義的な相対主義志向

    慣習的水準:③対人的同調、「良い子」志向

          ④「法と秩序」志向

   後慣習的水準:⑤社会契約的な法律志向

          ⑥普遍的な倫理的原理